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勉強会レポート

進藤博信氏|これからのデジタル化-新しいビジネスモデルを構築する-

写真:小倉明子(スタジオバク)

「株式会社アマナ」代表取締役社長である「進藤博信」氏が、お忙しい中、中部電塾のためだけに名古屋を訪れていただく事となり、“これからのデジタル” というテーマで、デジタルを武器にしたビジネスモデルをいくつかご紹介していただきした。非常に中身の濃い、斬新な内容でした。3名のレポートでご紹介して行きます。

目次

深澤明(中部電塾運営委員)レポート

進藤氏が語ったキーワードだけ掲げておく。

  • 「 アマナの競合はフォトグラファーではなく デザイナーだ 」
  • 「 写真というメディアにこだわってもらっては困る 」
  • 「 我々の社会的ミッションは 伝えたいことを、可視化することだ= Visualizer 」
  • 「 伝(え)たいことを伝(わ)るように。(え)を(わ)にすること 」
  • 「 1枚の絵を見て、お客さんにいかによだれを垂らしてくれるかが大事なんだ 」
  • 「 デジタル時代は 写真(機)から 写心へ 」
  • 「 先人が行ったある部分と、そのまた先人が行ったある部分と その隣人が行ったある部分の中から必要なものを選ぶ。 この選ぶことがクリエイティブなのだ」
  • 「 デジタル化の意味は、良いモノ(こと)を、早く(便利)に、安く(豊富)に」
  • 「 世の中が発展途上であることにいち早く気がついてほしい 」
  • 「 アナログ時代は 1位2位3位とあると、3位でも意味があった。 デジタル時代は圧倒的な1位にならないと生き残れない」
  • 「 いままで3人でやっていたことを1人でやること。徒党を組むことが重要 」
  • 「 情報と写真の安全性を確認することが重要。ライツクリアランス」
  • 「 危ない!と言われると放っておけなくなる 」
  • 「 問題を未然に防ぐ 」
  • 「 アマナのストックフォトでカンプを作って結構です。 本番撮影の前にご一報ください。写真を撮影した作家を説得しクリアにします。 お互いWIN - WINの関係を築きましょう」
  • 「 万が一事前に一報がなく後で発覚した場合。多額の請求をさせていただく」
  • 「 広告から個告へ。ナノ経済、ナノマーケティング。1人1人に視点を置く」
  • 「 ワンストップソリューション 」
  • 「 マル秘中のマル秘であるCADデータをメーカーから受けられる体勢を作るために ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の取得が必須。」
  • 「 アウトソーシングについてもISMS取得を求めている。穴があっては意味がない」
  • 「 建造物に著作権者が存在する場合があるので、やっかいな場合が多い。だからCGで作った方が安全であり、部分的に直せたりメリットが多い」
  • 「 建築家と組んでデータを作っている 」
  • Sony styleのこのウェブ画面は、動画ですか?静止画ですか?」
  • 「 どういう表現ができて何を表現できるのか、フォトディレクションが重要。 クロスメディアに対応してゆくこと。動画もCGも。 これらをすべてデザイナーが作っている。フォトグラファーはいらなくなる 」
  • 「 CADを制した者が、21世紀を制する 」
  • 「 早くデジタルカメラを捨てなさい 」
  • 「 写真を撮るということと会社を運営するということは 同じだけのエネルギーを要する 」
  • 「 何かを提案するときに一番伝わりやすいのは、それらを実行したり導入したり した際に、人がどれだけ減るのか。一人当たりの作業がどれだけ軽減するのか。 その答えを明示すると話が早い 」
  • 「 クライアントが支払うお金は少なく。自分のところに入るお金は多く 」
  • 「 ブランドがらみでメーカーとがっちり手を組むこと。徒党を組むこと 」

目が覚める思いだ。 いいターニングポイントになるだろう。 今年の締めに相応しい講演だった。 お忙しいスケジュールの中 一日名古屋まで来ていただき こころから感謝を申し上げると共に 進藤様の一言一言を無駄にせず努力してゆこうと 堅く誓った。

渡邊和仁(中部電塾運営員)レポート

11月の中部電塾は、今年を締めくくるにふさわしいスペシャルゲストにお越しいただいた。世界的な企業として名高い「株式会社アマナ」の代表取締役である「進藤博信」氏である。

当初、進藤氏は今回のセミナーへの登場には否定的だった。それは「電塾」という枠の中で自分が話す内容が適切かどうか不安視されていたのだ。「電塾」外から講師をお呼びする時、皆口を揃えて同じ事を言う。どうも「電塾」というのは、技術者の集まりのように他からは見えるらしい(苦笑)
デジタルカメラがこれだけ熟成され、誰もが気軽に問題なく使用できている中で確かに技術論も必要ではあろうが、我々が重要とするのは「デジタルカメラを知る」事ではなく、「自分のビジネスにいかに活かす事ができるか」であるはずだ。そういった意味で今年8月の柴田三雄氏から今回の進藤博信氏まで、一連の流れで進める事ができて中部電塾運営委員としてうれしく思う。

そして、そのビジネス戦略を語る上で今回のセミナーは非常に重要な位置付けとなる事であろう。それだけ、参加者の芯にまでしみる内容であった。

進藤氏のお話はまずアメリカの東海岸で栄えた鉄道会社社長の話から始まった。いわゆる「鉄道王の話」である。進藤氏は自社の入社式には必ずと言っていいほど新入社員に聞かせるという。

鉄道王は「自分の生涯の目標は大陸横断鉄道だ」と考え、必死になってその夢を叶えようとした。完成するまで20年。しかし完成後あっというまに倒産し、列車が西海岸までたどり着くことはなかったのである。なぜ失敗したのか?彼はあまりにも鉄道にとらわれすぎたのだ。20年という長い年月の間に高速道路・飛行機が発展したにも関わらず、彼は大好きな鉄道以外に目もくれなかったのである。

彼が成功する為に必要だったのは「鉄道」ではなく「トランスポーテーション(移動手段)」つまり、人々を移動させる事が最終目的であるべきだったのだ。

われわれ広告写真の業界に置き換えてみるとどうだろうか?写真が好きだからといって写真だけにこだわっていては鉄道王の二の舞。写真を撮る事が目的ではなく、「伝えたい事を可視化する」「クライアントの思いを見えるようにする事」これこそが我々の仕事である。

写真というテクノロジーだけで固定化するべきではない。「伝えたいことを、伝わるように」決して「伝える」ではない。「いかにクライアントが感動するか、喜ぶか」に、こだわる事が大事なのである。

そこには「デジタルカメラ」も「画素数」も「CCD」も「RGB」も「CMYK」も関係ない。それが最優先ではないのである。

氏の言葉がそれぞれの胸に突き刺さる。

日々の仕事に追われ、「何が大事なのか」失う事が多い中「もっと基本的なこと」「もっと未来のこと」それが最も重要なことであることを我々はもっと知るべきである。それが成功する経営者との大きな違いだと痛感した。

氏は言う。「写真」ではなく「写心」。いかに伝えるかが大事である。まだまだ発展途上なデジタルの世界に、技術論だけでとらわれるべきではない。

現代のクリエイティブの世界に新しさは既に存在しない。それぞれを組み合わせて、まったく新しく作り上げるものがこれからの新しいクリエイティブになるのだ。

氏はここで、Photoshopに対する独自の理論を話してくれた。現在の最新版「Photoshop CS2」はバージョンで言うと「9」である。これを「1バージョンを人間の1歳と考えると、まだたかが9歳じゃないか。全然子供だよ」と言うのだ。皆は「なぜ?」と思うかもしれない。だって、最新のPhotoshopは高度なクリエイティブ性を持ち、ユーザーのイメージを叶えてくれる素晴らしいソフトウェアへと成長している。それとともに初心者に向けてあらゆる機能を自動化し、簡単に画像処理がこなせるようにもなってきている。なのに「まだまだ未熟」というのだ。

「グーグルゾン」という名前の企業をご存知だろうか。以前インターネットで広まった米国企業の将来を予測する物語に登場する架空企業のことである。いわゆる何年後かに「アマゾン」と「グーグル」が合併するという意味であるが、ここにヒントがある。

「アマゾン」で本を買い続けると、そのうち本人が買いそうな本を薦めてくれるようになる。ここに「グーグル」の検索情報を加味すれば、個人に対するそれぞれの需要を大きく満たされるようになり、今までの販売形態を大きく覆すことになるのだ。いわゆる日本の古い体質である「大量生産」「大量消費」という「マス」での考え方を過去へと大きく置き去りにする事となる。

Photoshopはどうだろうか?自分の写真を作り上げる為には全て自分で指示をしなければならない。使い込めば使い込むほど私たちの好みを反映して新しいクリエイティブを自動で作り上げる事はできないのだ。そういった意味で「まだ幼い」というのである。

プロが使うソフトウェアであるので、それぞれの個性は自分で操作して作り上げるのは当たり前だと思うかもしれないが、将来を大きく考えると技術的な細かい事にこだわっていると手遅れになるのではないかと考えてしまう。

デジタル化の本当の意味。

もうひとつ例えてみよう。「佐川急便」は始めは「物を運ぶ」だけであった。ここにナビゲーション等の機能を追加し、運送ドライバーに営業を兼任させ始めた。いわゆる「セールスドライバー」である。さらに通信端末を持たせ「集金」を可能にした。いわゆる「eコレクト」である。デジタル化によって「ひとり」が「三役」になった。ここで初めて「我々のデジタル化は正しかった」と認識できるのである。

「フイルム」を「CCD」に変えたところで一体何が変わるというのだろう。たったそれだけで顧客はあなたの事を認めるのだろうか。世の中はあなたに仕事を与えるのであろうか。

「フイルム」が「CCD」になってラボが消えた。

「版下」が「DTP」になって写植が消えた。

しかし、これは万人に共通する事で自分自身のメリットではないと氏は訴える。重要なのは「そこから何を拡大させるか」「3人でやっていたことをいかに一人でするか」そして「いらない」ではなく「減らす」こと。「消えた」ことに目を奪われてはいけない。チャンスはそこにこそ、存在するのだから。

アナログはスタンドアローン(分業制)ができたが、デジタルは当てはまらない。フリーランスの人はできるだけ徒党を組むべきだと氏は提案する。自分とは違う役割の人と組む。また、同じ役割の人でも組む事で発展・展開させる。仕事を上手く分け与える事、それが「組織を作る」ということである。

インターネットの世界では1位以外に意味はない。アナログ時代は3位でも十分だったが、デジタルは「1位とその他」になってしまう。だからこそ「組織」として動かなければ淘汰される危険性が高くなるということだろう。

さて、ざっとレポートを書かせていただいたのだが、これだけ書いてしまえばわざわざ参加せずともレポート読むだけで満足の方も多いと思う。しかし実は講義内容の3分の1もここには書いていない。「アマナの現在と将来の計画」「ビジネスとしての展開とそれぞれの結びつき」「ピンチをチャンスに変える発想の転換」「写真業界のデジタル化による真実の敵とは」「われわれはこれから何をすべきで何に着目していけば良いのか」などなど。。。興味の尽きない話は他にもあふれるほどあったのだ。

しかし、これはやはり参加者の特権。進藤氏が皆に問いかけ、自ら考えるよう仕向ける議題も多かった。何にせよここから何を学び取り自分自身に活かしてこれからの力とするかが重要である。そういった意味では私自身に取っては、最近考えてきていたことの再認識を出来たことと間違っていないという自信、それにこれからどうすべきかのターニングポイントとして大切な1日となった。

近いうちにではなく数年後にもう一度、進藤氏とお話をしたいと素直に思った。

竹内広志レポート(中部電塾運営員)

アマナの進藤氏が語った「早くデジタルカメラを捨てなさい」の一言は心に衝撃として響きました。

画素数がどうとか、 CCDのがとか、RGBのプロファイルがAdobeでとかsRGBでとか、そんなことを問題にしていてはいけない。それよりも重要なのは,もっと基本的なことであり、未来を予測することであり、そして,それをいかに表現しクライアントに伝え、感動させ、喜んでもらうことであると。

このことは、写真家に限らず全ての業種・職種に共通であり、ともすれば、日々の忙しさの中で、日々の様々な煩わしさの中でついつい忘れがちな、しかし本当は決して忘れてはいけないことを、思い出させてくれた。

ここ数年のデジタルカメラの進化やPhotoshopの進化に一喜一憂し、いつしか、技術が進化することイコールクリエイティブであると錯覚したり、自分の技術が上達したと勘違いしている自分の目を覚まさせてくれたのかもしれない。

そして、鉄道王の話やSonyStyleのFLASHは驚きとともに、技術の進歩や今後の進むべき方向性の一端をかいま見せてくれると同時に、今まで忘れていた、Macの楽しさを今一度思い出させてくれこととなった。

昔初めて触ったMacはまだ漢字Talkもなく、PostScriptなどもちろんなかったけれど、それでも、今までのPCとは全く違うその姿や操作性に、限りない可能性と憧れと一緒に、楽しさを色々と与えてくれたことを。もちろん今のMacに比べたら出来ないことは限りなく多く、時には延々一時間以上もかけて演算した結果、「メモリーが足りませんでした」の一言で、終了したり、突然のフリーズで今までの作業が一瞬に消えてしまったりしたこと等,数限りなくあったりはしたけれど、でも今にして思えばその頃の方が楽しかった気がするのは自分だけだろうか?

後で考えると、なんであんなことがわからなかったのだろう・・・という事を、友人達と何時間も延々話したり考えたり。

3DもSony StyleのFLASHもいつしか古くなり、さらにその先には様々な目指して進むべきものがいくつも現れてくるけれど、それよりも、重要なのは「自分が感動し喜ぶ事が出来ないのに、クライアントを喜ばしたり感動させたりする事は出来ない」と。もちろん自己満足に,身勝手に,独りよがりにならないようにではあるけれど。

いつしか忘れていた事を思い出し,再認識させていただいた一日でした。

来年は,初心に返りつつ、未来を予測しつつ、自分が感動し、喜び、遊べる中部電塾になれるよう、微力ながら力になれたらと思いつつ今年最後の電塾を楽しんだ次第でした。

今回こられた方々は本当によかったのではないかと思うと同時に、こられなかった方は本当に残念だったのではないかと感じました。

 

進藤博信氏プロフィール

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