勉強会レポート
山口省一氏|今こそ液晶モニタに切替えよう〜2006年06月中部電塾勉強会レポート〜
今月はメイン講師として液晶モニタでお馴染みの株式会社ナナオ「山口省一」氏にお越しいただいたが、Adobeセミナーで名古屋入りしていた茂手木氏・中村氏・北岡氏・佐藤氏の4名が飛び入りで参加。1日を通して非常に中身の濃いセミナーなとなった。
第一部/初心者向け講座〜新・優しい電塾〜

今月で3回目をむかえる「やさしい電塾」ですが、毎回ごとにヒートアップしているように思えます。撮影部門・印刷部門・Web&フォトショップ部門の3つに分けて、それぞれテーブルに集まって話す訳ですが、各部門の声は大きくなり参加塾生は椅子から腰を浮かして前のめり体制で話して聞いて納得したり質問したりしている。みんな「タダじゃ帰らないゾ!」っていう意気込みだ。運営委員としては嬉しい事である。
今回は途中から茂手木秀行氏・中村成一氏・北岡弘至氏・佐藤武司氏も緊急参戦。前日開催されたAdobeセミナーで一泊して、わざわざ中部電塾のために時間を空けてくれたのだ。これはスゴい!惜しげもなく技術披露をして頂き、最高の講義となった。
撮影部門
私が担当した「撮影部門」では、前2回はデジカメの基本的な操作の質問が中心で、私たち運営委員も使った事のないカメラでは「取説」のページを繰りながらの冷や汗説明もあったりしていました。しかし参加メンバーも定着してくると、当然のようにレベルがアップし、質問が具体的な撮影方法に変わってきた。塾生の中には、一眼デジカメと三脚持参した人や、撮影したプリントを見せながら「なぜこんな写真になっちゃうの!?」などの話しになった。
ショーウインドーのガラス越しはどうしたら、綺麗に撮れるのか?薄暮時に灯籠の雰囲気を活かして撮影するには?・・・などである。実況中継風に再現すると・・・それぞれの撮影場面に適したテクニック的な定石みたいなルールがあって、それを守って撮影する。さらに、その撮影結果から自分なりにアレンジして違う撮影方法を試す。デジカメだから失敗を恐れずにたくさん撮りましょう、トライアンドエラーが近道になる場合が多いですよ。・・・塾生自身で半分理解し半分は納得していないらしく、さらに詳しい説明が求められる。もうこの先は概念です!撮影したいモノや人が決まったら、それをどういう絵柄(写真)にしたいかを事前に頭の中に作ってシュミレーションしておきましょう。タテなのかヨコなのか?被写体は画面のまん中?右?左?などなどです。実際の撮影ではシュミレーションどうりに写ったか?違ったのなら、どこがどう違うのか?を自分で確認して再度トライ!このくり返しでアタリ写真の確率が増えてきます。無責任な言い方かも知れませんが、被写体(素人のフツーの人)が笑った写真を撮りたかったら撮影しながら自分が笑う。結構ウマくいく場合もあります。念力じゃありません、撮影者の意気込みです、ハイ。
ディレクターさんからは「カンプと実際の写真は?」という永遠のテーマのような発言があり、これは受け売りですが「カンプはクライアントのオーケーを貰ったものだから、一種の契約です。カンプどうりに撮るのがいいでしょう」という結論です。「でも、それじゃ面白くナイ!」こ、困った。私が2案3案出す時の考え方を聞いてもらい、それも一つの方法ですね、と納得してもらいました。
ひと段落したところに、豪華特別ゲストの到着。Web でお知らせしていた中村成一氏・茂木秀行氏・北岡弘至氏の3名である。塾生は中村氏の作品のスライドショーを食い入るように見つめ、撮影方法やアイディアなどを積極的に質問し、それに真摯に応えられていた事に感謝感謝でございます。 佐藤武司氏は午後から参加されました。
文:越野龍彦(中部電塾運営員)
フォトショップ部門
今回は広告業界に携わるデザイナー・カメラマンから最も要望の多かった「CMYK変換」についてのお話です。これ、セミナー形式で話すと、論議ばかりで全然難しくてわからない。プロファイルの話だって、実際にやってみないと知ることは出来ないんです。優しい電塾での私は、こういった問題を流してしまわないように、話だけではなくやってみせて納得させるように心がけています。
デジタルカメラのRGBデータを印刷用 CMYKデータとして変換・最適化するのに重要なのは3つしかありません。「色」「使用サイズ」「シャープネス」です。この3つをフォトショップでどのように扱い、どこに観点を置いてそのタイミングで処理を行えば良いのか。実際に撮影したデータで作業を行いながら説明しました。
フォトショップでCMYKに変換するのはかんたん。けれど、それをデザイナーやカメラマンが行うことで、どれほどの問題とリスクが生じるか。モニタ上ではそれほど変化のないCMYK変換データにどれほどのトラブルが潜んでいるのか。丁寧に解説してみましたところ、参加者はちょっと驚いていたようですね。自分の普段気軽に行っていた作業がどういったものか再認識されたようです。要点さえ知ってしまえば、意外にも簡単かもしれないのではないかと思われた方も多いでしょうけれど、実際には一番重要な「色」について詳しく解説出来る時間はありませんでした。CMYK変換は、もっともっと奥深いものですが、今回の講習を知っているだけでも、大きなトラブルが減るのではと確信しています。
とりあえず、内容について詳しく知りたい方は「早川廣行のPhotoshop CS2プロフェッショナル講座〜自動処理・TIPS編〜 」を読んでみましょう。目から鱗の印刷最適化について書かれていますよ。(っていうか、自分で書いたんですけど)
文:渡邊和仁(中部電塾運営員)
茂手木秀行氏・中村成一氏・北岡弘至氏登場

少し遅れて、茂手木氏・中村氏・北岡氏が会場に到着しました。しばらくは各セッションを見て回っていましたが、最後には撮影部門で茂手木氏・中村氏が自分のコンピュータを持ち出して熱く語っておりました。北岡氏も以前は製版会社に勤めていた経験から、太田原氏の印刷部門へ参入し、一緒にディスカッションを行っていました。
話は尽きない状況だったが、時間切れ。今月の初級講座はこうして充実した内容でお届け出来たように思います。
そのまま午後からは自己紹介。人数はぼちぼちでしたが、講師陣がスゴいため会場は妙な熱気に包まれていました。
文:太田原進(中部電塾運営員)
第二部/山口省一氏〜今こそ液晶モニタに乗り換えよう!〜
自己紹介後は第二部のスタートだ。プロフェッショナルモニタメーカー「EIZO」でおなじみ、株式会社ナナオの「山口省一」氏が特別講師としておよそ1年ぶりの中部電塾登場だ。
今回山口氏に講師をお願いしたのは、CRTから液晶モニタへの移行が以前に比べて急速に進んでいることが背景にある。Adobe RGBモニタが一般的に普及し始め、液晶モニタの大型化・高品質化・低価格化に拍車がかかっている。ところが、DTPの業界では未だにCRTモニタに縋ろうとしている。これを打破するため、メーカーの技術開発者によって実機を交えながら、太鼓判を押して欲しかった狙いがあった。デジタルカメラデータ・カラーマネージメント・液晶モニタの関係はすでに熟成の域に入り始めている。いつまでも次世代への進化を足踏みしている時代ではないのだ。
実は山口氏への講師打診はずっと以前から行っていたのだが、スケジュールの都合で今月まで延期していた。開発者と技術指導者という立場から日本だけではなく世界的に飛び回っていることの多い山口氏。先週も海外に出張していた状況で、非常に忙しい立場の人だ。
延期していたお詫びにすばらしいお土産を持ってきてくれた。間もなく登場するハードウェアキャリブレーション対応液晶モニタ「ColorEdge CE240W 」である。山口氏、どうやら中部電塾でどうしてもこの新型液晶モニタを紹介したかったらしく、スケジュールを調整していたようだ(実際これの開発のために忙しかったそうだが)。心憎い演出ですな☆
左下の写真は今回持ち込んでもらった2台のキャリブレーションモニタ「ColorEdge CE220」と「ColorEdge CE240W」である。新作と同時にAdobe RGB対応のキャリブレーションモニタも持ち込んでもらって、実際に色の比較と性能の違いを語ってもらうことにした。
まずは最初に初心者向けに液晶モニタを導入する上での「メリット」と「デメリット」を話して頂いた。これも私がご要望していたことで、ユーザーに撮ってはCRTモニタとの違いを今現在の最新技術と照らし合わせて知ることの出来る非常に重要な内容である。
これを知ることで正しい液晶モニタを選ぶ基準となるので、塾生、特にデザイナーには非常に勉強になったのではないか。
液晶モニタを導入する上でメリットとなるのが「省スペース・省電力(発熱が少ない)」「設置の自由度が高い」「完全フラットで歪みがない(歪み設定がない)」「色ズレがない」「寿命が長く経時変化が少ない」「地磁気の影響を受けない」「環境光の影響が少ない」「デジタルインターフェース」などがあげられる。お気づきだろうが、「カラーマネージメント」には触れていない。単純に液晶モニタにするだけでもこれだけのメリットがある。CRTモニタを使用しているユーザーなら「面倒」と思われていたことが液晶では必要なくなる。このメリットだけでも十分買い替える意味があると思うのだが。。。
逆にデメリットとすると「カラースペースが狭い」「コントラストなどが視野角依存」などが、昔から液晶の弱点とされてきた。しかし、現在では双方ともほぼ解消されてきており、さほど問題にはなっていない。つまり、液晶モニタにするデメリットなど、すでに存在しないと言っても過言ではない時代が来たのだ。
しかし山口氏は「プロとして液晶モニタを選択するのならハードウェアキャリブレーション可能なモニタはもはや必須条件だ」と言う。ハードウェア。つまり、「アイワン」や「モナコ」のようにソフトウェア的に調整するのではなく、モニタ自身にその調整が行える必要があるというのだ。これがナナオでいう「Color Edge」シリーズである。値段が高いといわれがちだが、日々のメンテナンスとカラマネによる設定の誤差は圧倒的に少ないことから、プロとして常に安定して使用するために絶対に必要となるのだ。ソフトウェアで行うキャリブレーションには限界があり、毎度の調整での誤差はどうしようもない。これでは色の安定を定義づけるカラマネの理屈からは外れてしまう。まさにプロにとっては「安物買いの○○」に他ならないのだ。
山口氏は実際にキャリブレーション設定を実践し、その利便性を説いた。将来の自分のデジタルソリューションを考えた上では費用対効果は目先のコストを軽く超えてくるだろう。時代がすでにそれを必要としているのだ。買替えを拒む理由が見当たらない。
第三部/茂手木秀行(カメラマン)&北岡弘至(フォトレタッチャー)による最先端のコラボレーション
さて、続いては4名の講師による緊急ディスカッションだったが、茂手木氏の提案で急遽実演が行われることになった。前日のAdobeセミナーの内容をさらに進化させたもので今回が初公開となる。そしてこのセミナーこそが、のちの「Photoshop World」での彼らのセッションへと発展していくのである。実は中部電塾がβデモを行っていたのだよ(ニヤリ)
内容はカメラマンの茂手木氏とその写真を加工するフォトレタッチャーの北岡氏が同じ場所ではなく遠隔地にいながらにしてリアルタイムに作業をこなしていくというもの。回線は会場のインターネット回線を利用してVPNで接続。お互いに目の前で作業は行っていたが、実際にはお互いのコンピュータはインターネットを使って接続され、遠く離れた状況でも同じ条件になるシステムを構築。急遽行ったデモなのにここまで作り上げる茂手木氏には脱帽だ。
被写体は参加していた塾生である女性に突然依頼。北岡氏側で既に用意されているアメリカの風景に合成を行うというものだ。
北岡氏と茂手木氏は「iChat」を利用して打ち合わせをリアルタイムに行う。お互いのアップル製品であるノートブックにはWebカメラがあり、映像つきで会話を行うことが出来る。また、茂手木氏は「Apple Remote Desktop」を使って、インターネットを介して自分のコンピュータに北岡氏のノートブックのデスクトップ画面を呼び出した。つまり、茂手木氏は北岡氏と映像で会話を行いながら、北岡氏がコンピュータで何をしているのかを瞬時に知ることが出来るようなシステムを作ったのである。撮影したデータの転送には「ActiveAssets」を使用。ホットフォルダの機能で、撮影したデータが自動的に次々とインターネット経由で北岡氏のパソコンに送られてくる。参加塾生はあまりにもの次世代的な撮影方法に呆然としていた。
さっそくモデル撮影が始まった。北岡氏は遠隔地にいることを想定しているのでコンピュータ内の「iChat」カメラ映像で撮影を監視。細かく指示を出す。撮影する茂手木氏はD2xを無線で使用。撮影されたデータはコードレスで茂手木氏のノートブックの指定のフォルダ取り込まれ、それと同時に「ActiveAset」が起動しインターネットVPN専用回線を通して自動的にリアルタイムに遠隔地の北岡氏のコンピュータに転送される。北岡氏はそのデータを確認し、簡易的にPhoitoshopにて背景の写真と合成を始める。その作業は今度は「Apple Remote Desktop」を通して北岡氏のデスクトップ全体の画面が茂手木氏のコンピュータに映し出される。その合成データをお互いで見ながら、「iChat」で会話を進行し、より良い撮影方法を模索して次の的確な撮影を進行していく。アングルやモデルの表情などが、遠隔地ながら的確にリアルタイムでフォトレタッチャーからカメラマンの元へ届き、効率の良い撮影が進行していくわけだ。
撮影が確定するとすでにデータは北岡氏のもとに届いているので、北岡氏はさっそく本格的な合成処理を開始する。キリヌキ作業は基本的に「パス」で行う。ここは通常と同じ。そして髪の毛はブラシでマスキングして細かく神経を使って行う。ここで大活躍するのが「ペンタブレット」である。フォトレタッチャーの北岡氏にとっては「タブレット」は必須アイテムで、これ無しに合成処理を行うことは不可能だそうだ。2日もあれば誰でも慣れるそうで、全員にお勧めしていた。この合成作業は10〜15分程度で終了。本当はもっとじっくり時間をかけて行うそうだが、デモなので軽い感じで作業。
一連の流れについてスゴいことはわかるのだが、仕組みに関してイマイチ理解出来ていない人が多かっただろう。それもそのはず、茂手木氏が使用しているシステムのほとんどが、広告写真業界で一般的に普及していないものばかりだったからだ。しかしどんな方法であれ、こんな撮影システムが未来ではなく今現実として行われているのである。これは衝撃として皆が受け止めねばならないだろう。茂手木氏が言いたいのはその「システム」ではなく、それによる「効率化」と「コスト削減」そして、一番重要な「クリエイティブ」に惜しみなく時間をつぎ込むべきだということ。その方法は何だっていい。デジタルだからこそ可能な世界なのだから、積極的に取り組もうということなのだ。
第四部/豪華ディスカッション

最後に茂手木氏・中村氏・北岡氏・佐藤氏の4人を交え、デジタルの今後についてお話を行いました。茂手木氏からはさまざまな現状の問題と警告を、中村氏からは無駄なことにとらわれない写真の本質を、北岡氏からはフォトレタッチの現状と可能性を、佐藤氏からは映像の分野から見たデジタルの今後について熱く語って頂きました。詳細は特別プログラムにより割愛させて頂きますが、非常に有意義でした。皆様、本当にありがとうございました。
文:渡邊和仁(中部電塾運営員)
写真:本多智行(スタジオバク)
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