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勉強会レポート
伏見行介氏|フォトプロダクションのいまとこれから-2008年11月中部電塾勉強会-
文責:渡邊和仁(中部電塾運営委員)/写真:練木良充(スタジオバク)
午前中初心者講座「優しい電塾」

午前中の「優しい電塾」は、参加者も少なかった為ご質問にピックアップさせて頂くかたちで進行しました。Photoshopの使い方や、ホワイトバランスの設定方法。撮影現場の雰囲気を重視して忠実に再現するか、はたまたグレーバランスを整えて撮影時点で追い込むか。そして何の為のRAW撮影なのか、我々フォトグラファーは何処でどうやって写真の再現を追い込むかなどをアツく論議を交わしました。
また、他のご意見では「Adobe RGBを使えと言われたのですが。。。」と、とある東京の講義で受けた情報に困惑されていた方のお話に中部電塾ならではの噛み砕いた情報を加え、「何が大切かで条件は変わってくる」ことを詳しく説明。こういった重要な情報を切り捨てて、何でもかんでも「Adobe RGB」だの「RAW撮影」だの初心者に押し付けては困惑するでしょう。そのこと自体が本人にとって、会社にとって、しいてはクライアントにとって「無駄」では意味がないのです。
RAW現像における最も適したソフトウェアは何なのかという質問もありました。各メーカー純正にもそれぞれ良いところはあるし、「Adobe Photoshop Lightroom」にも良いところがある。これも決まっているわけではなく「それぞれの仕事に適した条件」があるはずなのです。写真1点の追い込みの為にLightroomを使う人はいないでしょう。これも誰かに押し付けられるのではなく、我々はアドバイスとして様々な情報をお伝えしました。それに対して次回以降フィードバックがあったり、更なる不明点があり、そして様々な事を知り、納得し、初めて自分自身の成長があります。
これからもこの「優しい電塾」が、そのぶつかり合う意見をそれぞれ尊重し、皆で成長して行ける場所であればと感じました。ご参加の皆様、ありがとうございました。

恒例の自己紹介。KDBの福島さんがわざわざ関西よりお越し下さいました。
第二部/伏見行介氏〜フォトプロダクションのいまとこれから〜
さて、午後からは東京で活躍するフォトグラファーでありディレクターでもある伏見行介氏に初めて中部電塾へお越しいただいての講義となった。内容が「技術論」ではなく「ビジネス論」だったのが理由なのか、参加者は少なめ。自分の状況を考えると単純に忙しい人が多い時期だったのかも。
どんな話になるのかと思っていたら自分自身の仕事にも大きく関係する、非常に興味深い内容だった。こういった話は通常の一般講義では中々聞けるものでは無いし、我々中部電塾運営委員が「今、もっとも必要なこと」として捉えているテーマに適しており、講義が終わって改めて「お願いして良かった」とつくづく感じた。それでは一通りの講義内容についての感想を述べて行きたいと思う。
まずは伏見氏から見た東京のフォトグラファーと呼ばれる人々の現状についてから。「東京で生き残るには」といったテーマから始まった。名古屋講義で何ゆえ「東京の現状」について冒頭に話さねばならないのか。これについては私にはよくわかる。我々の仕事はなんだかんだ言っても東京が中心。地方からすれば東京には山ほど仕事があると印象を持っているが、それに比例して東京に存在するフォトグラファーも想像以上に存在する。では、東京に仕事があるからと言って東京のフォトグラファーは皆稼いでいるのか。答えはおそらく「ノー」だ。東京のフォトグラファーはAPA会員だけでも450名。エディトリアルフォトグラファーと呼ばれる「雑誌専門」のフォトグラファーまで数えたら星の数ほど存在していると言われている。年収はというと、とある統計では平均して三百数十万円前後らしい。正直、一般サラリーマンの平均年収には遠く及ばない数字だ。決して華やかな業界ではないことが伺える。そうかとおもえばひとりで億単位の年収を稼ぎ出す人もいる。中には四億以上というフォトグラファーまで存在するのだ。それを平均してもこの金額であったのなら、ミニマムまで考えるとどんな厳しい世界かは安易に想像出来る。
フォトグラファーと言うのは誰しも一度はニューヨークに憧れるもので、伏見氏も同じく数年間ニューヨークでアシスタントとして写真を学んだそうだ。氏がニューヨークでアシスタントとして学んだことには大きく分けて3つある。「Strategy(戦略)」「Style(独自性)」「Finance(財務)」の3つだ。何だか「写真における技術」ではないが、これを知ることによりその後の自分のビジネスに間違いなく大きな影響を与えたようだ。
Strategyとして学んだことは「決して好きなだけでは成功しない」ということである。またニューヨークで成功するにはどれだけ実力を兼ね備えていようと末端から這い上がることは決して出来ない。そこにはマーケティング戦略が必ず必要になるということだ。「写真が好きだから」といってこの業界に入ってくる人は多いが、好きな写真だけを撮って成功するフォトグラファーなんてほんの一握り。重要なことはもっと違うところに存在すると感じたという。
Styleはフォトグラファーである以上誰もやったことのないスタイルを目指せば技術よりも注目されるということ。上記で話したことと反対の事を行っているようだがそうではない。ニューヨークでは「真似事」は最も否定される条件になる。当然の事だろう。但し、3〜4年もすれば簡単に飽きられてしまうのが我々業界の常。定期的に自分のスタイルに変化をつけたりモデルチェンジをすることも長くやっていく上では重要だという。
Financeは正直非常に重要な要素だ。フォトグラファーは単独フリーで活動している人が多く、どうしても金銭面でしっかり出来ないことが多い。組織と仕事をすることがほとんどな訳で、悪い言い方をすれば都合良く使われるだけの存在になってしまう。緻密な進行能力と明確な見積の提示がしっかり出来なくては、この業界でビジネスとして大成するのは簡単ではないと言うことだ。
話を元に戻して東京の現状へと続く。
我々の業界で大企業と言えばやはり「アマナ」である。すでに総合映像企業として巨大化したアマナに対してまともに正面から対決しても意味がない。
そこで伏見氏は「セレクトショップ」という形式で自分のビジネスを確立しようと考えたという。セレクトショップとはオーナーやバイヤーのセンスで商品を選ぶ形式で、ニッチな分野へと「人」と「作品」で提案をしていこうとする考え方だ。これは来月登場する映像クリエーターの「佐藤武司」氏のビジネスにも類似してくる。クリエイティブを自社教育するのではなく「今必要な価値観」を商品化し、マネジメントすることでビジネスをコントロールできるようになれば、新しい分野のビジネスとして我々の業界でも根付かせられるということだ。
伏見氏が言うには、これだけデジタル化が進み気軽に写真を提供出来る環境が整ったことで「プロがアマチュア化し業界全体のレベルが下がっている」と感じているという。
私も確かにそう思う。
これは我々だけの業界に言えることではなく価格競争に追い込まれた業種は全体のレベルが下がり、結果的に総合的な売上や利益も低下する。我々広告業界ではそれが顕著に現れ、レベルの低い広告写真はその広告自体の効果が薄れてしまうので結果的に価格競争を提示した顧客は、自分で自分の首を絞めてしまうことになる。「良いものを安く」は今の時代当然だが、「理不尽な価格競争」は広告自体を壊滅させるに他ならない。伏見氏はそういったことが起きないよう、パートナーとして仕事を行う人とは信頼関係に基づき「丸投げ」してもちゃんとコントロールできる相手と仕事をするべきだと考えているようだ。また規模としては誰が何をしているかを把握出来る20人くらいまでが理想なのではないかという話も出た。
私は東京における「雑誌の編集ページ」の撮影というのはとんでもなく単価が安く、非常にキツい仕事だと思っていた。ところが伏見氏はそう思っていないらしい。雑誌(広告ではなく各編集ページ)と言うのはそのほとんどがページ単価が決まっており、どんなに写真が多くても少なくても金額に変わりがない。そのため各ページによって不平等が起きてくるのだが、業界内ではそれが上手くコントロールされているらしい。また、「経費」が別途で認められることが多く、どうしても必要なカメラやスタジオ等のレンタルはしっかりと提示し、相手が納得すればしっかりと別扱いされるのだという。実際に仕事をしたことがないので細かいことはわからないのだが、上手に戦略を立て、1月に数百ページ撮影ができれば普通に生計を立てられるというのだ。特に女性向けの雑誌は重要な位置付けであり、要は受け方次第といったところなのであろうか。それが全てでは決してないのであろうが。。。
また、近年では非常に「Web媒体における広告写真」が注目を浴びてきており、企業が投資する予算も、写真の質もものすごい勢いでレベルアップしているそうだ。一昔前までは「マルチユース」と言った言葉が流行ったように、まずは印刷広告があり、Webはその流用といった図式があったが、完全に昔の話で、企業はWebの為だけにとんでもない予算を組んでしまう。Webという媒体を意識して撮影するには「ヨコ位置でフレーミング出来るセンス」と「動きの中からスチール写真をリアルに撮れる感覚」が重要だと氏は言う。これは私も全くもってその通りだと思う。特に後者の感覚は今までの印刷広告には存在していない新しい分野であり、映像とスチールの組み合わせによる新しいクリエイティブの表現は既にWebでは始まっていて、様々なサイトで見ることが出来る。
伏見氏はこのWebの広告写真を「やりがいのある、面白い仕事」と表現していた。技術も必要だし、センスも必要。そして提案力も必要で、未知の世界の技術も必要。だからこそ面白く、達成感があるのだと思う。
逆に伏見氏は「流通」には手を出さないらしい。それは嫌といった理由ではなくて、商品管理や商品の置き場所の問題から、自分の会社には適していないと感じているからだ。逆を言えばそれを専門として得意とするフォトグラファーもいる。何でも受注していては「セレクトショップ」としての意味がない。自分が得意とする分野を中心に深く掘り下げ、新しい可能性を見いだすことこそが厳しい業界で生き残る術であると氏は言いたいのかもしれないと感じた。
フォトグラファーとは
- 写真がウマいこと(技術ではなく魅力があるかどうかということであろう)
- 人に好かれること(嫌われては仕事にならないし簡単な事さえ上手く行かなくなる)
- 暇な時間を上手く過ごす事(これ、非常に重要だと思う。これでその人の成長度が伺える)
- 損益計算の出来る人(個人レベルが指標する「頑張った」はビジネスとして無意味)
- 流行に左右されないこと(安定して長く仕事するには足枷になる可能性がある)
一通りの話が済んだ後で氏の言われたこれらの言葉は、実戦経験から培われた言葉としてとても説得力があり、全てを物語っていた。
この後、インターネットを通じたビジネスとして「ストックフォト」について語られた。「暇な時間をいかに有効的に使うか」を実践していて、とても面白い内容だった。私自身の会社でも同じようなことをしており、同じく「面白い」と感じている。これがビジネスに結びつくのだから楽しいに決まっている。思考を切替え、新しいビジネスに挑戦する。常にこれを怠らない事。それこそが今の時代を生き抜く術なのだ。
夜は懇親会と2次会にまでおつき合いくださり、様々に楽しい話が出来た。やはり、お呼びして正解だと感じた。
中部電塾が目指す講義、そのものだった。

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